仏報ウォッチリスト

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 「采女」を見た

国立能楽堂興福寺勧進能「采女(うねめ)」を見ました。天皇に仕えながらその寵愛が薄れたのをはかなんで猿沢池に入水した女性。その来歴を聞いた旅僧が供養し、喜んだ釆女の亡霊が御代を祝福し仏教を賛仰する舞を披露します。

シテ「ありがたや妙(たへ)なる法(のり)を得るなるも、心の水と聞くものを、騒がしくとも教へあらば、浮ぶ心の猿沢の、池の蓮(はちす)の台(うてな)に座せん……」(略)
ワキ「もとよりも人々(にんにん)同じ仏性なり、何の疑ひも波の上」
シテ「水の底なるうろくづや」
ワキ「乃至草木国土まで」
シテ「悉皆成仏」
ワキ「疑ひなし」
地謡「ましてや人間においてをや。龍女がごとくわれもはや、変成男子なり、釆女とな思ひ給ひそ。しかも所は補陀落(ふだらく)の、南の岸に至りたり、これぞ南方無垢世界、生れん事も頼もしや、生れん事も頼もしや」

終わり間際に〈…さんぶつじょうのいんねん…〉という地謡があり、法相宗だけに「三(仏)乗」なのかと思いきや、謡曲集によると「讃仏乗」(出典は『和漢朗詠集』仏事・白楽天)とありました。