仏報ウォッチリスト

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 「山姥」を見た

国立能楽堂お能「山姥(やまんば)」を見ました。
都で山姥の物真似をして評判をとった遊女が本物の山姥に出会う話。遊女は従者を連れて善光寺への旅の途中、というのが前段。ツレ、ワキ、ワキツレ2人、アイとぞろぞろ登場するわりに本筋とはあまり関係ない……ということは終わってみて分かります。けれどもそちらの視点を常に意識して見ることが大切なのでしょう。
後シテの山姥本人が妄執を払う山廻りのさまを舞うのが眼目。詞章に仏教用語が多発するので、かつては一休の作とも言われたとか。

地謡:法性峰聳えては、上求菩提を現はし、無明谷深き装ひは、下化衆生を表して、金輪際に及べり。……邪正一如と見る時は、色即是空そのままに、仏法あれば世法あり、煩悩あれば菩提あり、仏あれば衆生あり、衆生あれば山姥もあり、柳は緑、花は紅の色々。……
シテ:一樹の蔭一河の流れ、皆これ他生の縁ぞかし、ましてや我が名を夕月の、浮世を渡る一節も、狂言綺語の道すぐに、讃仏乗の因ぞかし、あら御名残惜しや。……

これは単にバケモノを描く舞台ではありません。「名残惜し」の妄執は他ならぬ“私”の姿です。