仏報ウォッチリスト

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 埼玉の「円空」展

埼玉県立歴史と民俗の博物館で「円空 こころを刻む 埼玉の諸像を中心に」を見ました。江戸時代の円空作の木彫像が約170体並ぶさまは圧巻です。
なにゆえに埼玉なのかというと、実は円空の作品が生まれ育った岐阜・愛知に次いで多いのだそうです。その理由は定かでないものの、おそらく江戸から日光への途中で滞在していたのではないかという推測がなされていました。
やはり現物を実際に見ることは大切。事前に写真で見ていた印象とまったく違います。正面から見ると均整がとれている像が、木材の使い方によって背面が異常に貧弱だったりとか、一体ずつ興味は尽きません。
写真だとどれもほぼ同じ大きさに見えるのに、まさか2メートルの巨像から5センチの木っ端までも開きがあるとは思いもよりませんでした。だいたい30センチくらいのサイズの像が、作り込みすぎずあらも目立たず安心して向かい合える気がします。
いくつかの像に共通する特徴として、手を袖の中に入れて胸の前に持ち上げているのは、なにか深い意味があるのか、それとも単に指を彫る手間を省いたのでしょうか。それと下腹部に彫った飛雲、衣のひだの延長が渦巻き状になっており、これも個性的な表現です。
誰にも真似できぬ微笑を含んだ表情は、如来や菩薩や明王といった区分を取り払い、円空仏と呼ぶほかないスタイルを主張しているのでした。
展示の最後に、顔面を著しく損傷した1メートル近い像が2体あり、〈かつては子供の遊び道具であった〉と説明書きがあります。円空仏はそうこなくちゃとうれしくなりました。