仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

2016年2月の講演

東京近辺で2月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(2/1更新)


  • 禅をきく会
     日時:2/1 13:00
     会場:メルパルクホール
     講師:中溝裕子「食べることは生きること」
        田上太秀「ほとけも昔は凡人だった」
     主催:曹洞宗詳細



  • 東大寺東京講座
     日時:2/6 14:00
     会場:青松寺観音聖堂
     講師:平岡昇修
     演題:だれも知らないお水取り
     主催:東大寺


  • 南無の会辻説法
     日時:2/10 19:00
     会場:常円寺
     講師:野坂法行
     演題:人間社会に宗教が必要なわけは?
     主催:南無の会


  • 心を磨く正眼セミナーin東京
     日時:2/11 14:00
     会場:龍雲寺
     講師:柴田文啓「意義ある第二の人生を」
        山川宗玄「無心の一歩」
     主催:東京禅センター


  • 『摂大乗論』に学ぶ
     日時:2/11 19:00
     会場:青松寺観音聖堂
     講師:竹村牧男
     主催:青松寺


  • 在家仏教講演会
     日時:2/13 10:00
     会場:大手町ビル
     講師:安冨信哉
     演題:悟りと浄土 他力の救済
     主催:在家仏教協会


  • 東大寺東京講座
     日時:2/13 14:00
     会場:青松寺観音聖堂
     講師:森本公誠
     演題:聖武天皇の実像を追って(49)
     主催:東大寺




  • 第22回愛宕薬師フォーラム
     日時:2/17 14:00
     会場:別院真福寺地下講堂
     講師:宮治昭
     演題:仏像(ほとけ)たちは何を語るか
     主催:智山教化センター


  • 仏教カルチャー・セミナー
     日時:2/20 13:30
     会場:中野サンプラザ研修室
     講師:奈良康明
     主催:日本仏教鑽仰会(03-3967-3288)


  • 青松護持会講座「仏教歳時記」
     日時:2/20 13:30
     会場:青松寺観音聖堂
     講師:金子真介
     演題:第7回 涅槃会
     主催:青松寺


  • 真宗連続講座『正信偈』に学ぶ浄土真宗
     日時:2/20 15:00
     会場:築地本願寺
     講師:本多靜芳
     演題:法然聖人(2)念仏と信心(数ではなく質)
     主催:築地本願寺


  • 第578回日曜講演会
     日時:2/21 10:00
     会場:武蔵野大学グリーンホール
     講師:寺崎修
     演題:仏教界の抱える課題
     主催:武蔵野大学



  • 仏教聖典を生活に活かす会
     日時:2/25 13:30
     会場:仏教伝道センタービル7F
     講師:一島正真
     主催:仏教伝道協会


  • いのちを見つめる集い
     日時:2/25 13:30
     会場:江東区・正覚院
     講師:若松希和
     演題:Live and love your life 自分自身を生きる
     主催:仏教情報センター


  • 在家仏教講演会
     日時:2/27 10:00
     会場:大手町ビル
     講師:山折哲雄
     演題:悟りと浄土 確信の〔小乗〕と迷いの〔大乗〕
     主催:在家仏教協会




「書の流儀」

出光美術館で「文字の力・書のチカラⅢ 書の流儀」を見ました。
第1章は書の多彩な表現を主に仏教関連の作品で提示。奈良時代薬師寺経に見える楷書の歴史。理趣経種字曼荼羅の絵画的な遊戯。日課念仏のリズム感。明恵筆消息の即興的な字を見ればその内容を読み取りたいと思わずにはいられません。ここまでだけで、ひとくちに書の鑑賞といってもいかに見方が多様で、見る側が作品によって意識の切り替えを行なっているかがわかります。
第2章は頼山陽とその書風を慕った人たちの作品の対比。タイトルの「流儀」とはここらを指すのでしょう。
第3章は墨跡。前章から目を転換。〈墨跡については、元来、巧拙を問うことはなく、ほぼ人物の歴史的評価を保証とした評論や解説になっていることもその証だろう。つまり、墨跡は書家の手がける作品の対極にあることになる〉(図録解説)。好き勝手に書いているように見えて、一貫する何かがあります。それは禅味といえばいいのでしょうか。厳めしい一行書と、ユルい禅画を貫くもの。かすれも魅力のひとつ。伝尊円親王のあざやかな鏡文字と逆さ文字にうなります。
第4章は仮名古筆、第5章は伏見天皇、第6章は本阿弥光悦松花堂昭乗。なるほど継承されてゆく書というのはこういうものかという見本のオンパレード。流儀に忠実といっても決して没個性ではなく、かえって主張が浮かび上がってくるところに味わいを感じました。

「水 神秘のかたち」

サントリー美術館で展覧会「水 ―神秘のかたち」を見ました。飲料会社サントリーを持ち上げる企画かくらいに軽く考えていたらとんでもない、テーマ追究の深さに驚きました。
水と信仰との関係——多賀社の湯立、流木で造った長谷寺式十一面観音、サラスヴァティ河を神格化した弁才天、海上交通の守護神だった瀬戸神社、同じく航海神の住吉大社、水分が転じて御子守に、祈雨と善女龍王・摩尼宝珠・孔雀明王、蓬莱山と洲浜、聖地としての四天王寺……。
目に訴える流水文様は、冒頭の銅鐸に始まり、金剛寺日月山水図屏風、春日龍珠箱の内箱外側、応挙青楓瀑布図と繰り返し登場。
圧巻は弁才天コーナーです。江島・竹生島・天川・厳島の四大聖地を挙げ、宇賀神を皮切りに蛇体の天川弁才天曼荼羅も異様。高野四社明神図の次に和歌山県博で木型と共に拝見した女神坐像。
羽黒山御手洗池から600面出土した鏡2面は絵柄が左右対称ではない和鏡。
定智筆善女龍王像は意外にも大きな図でした。印刷で見るとどうも前のめりでバランスが悪く、軸装するときに切ってしまったのではないかとも思っていたのですが、現物を見るとこの構図できっちりまとまっていました。印刷だと足元がボケていて立ち姿の力点が想像できないからかもしれません。
蓬莱や菊水といった文様の入った工芸品は、同美術館の得意分野です。数年前に拝見した谷文晁の石山寺縁起絵巻がこういう応用形で出てくるのかと感激。
サントリー美術館と、巡回先の龍谷ミュージアムの所蔵品が多いのは当然ですが、もう一館、神奈川県立金沢文庫の協力も大きいと思います。瀬戸神社や龍華寺の作品は同文庫の展示で拝見していますし、要所に称名寺聖教が配されて解説に一役。請雨経法道場指図には使う道具を青で揃えるため赤色の物は入るべからずと書かれていると。貴重な証言です。
これは展示替え後の後期も来なければ。(と思いつつもかなわず。追記)
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2015_6/display.html

2016年1月の講演

東京近辺で1月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(1/4更新)

  • 在家仏教講演会
     日時:1/9 10:00
     会場:大手町ビル
     講師:佐藤研
     演題:悟りと浄土 イエスとその弟子たちとの場合
     主催:在家仏教協会


  • 東大寺東京講座
     日時:1/9 14:00
     会場:青松寺観音聖堂
     講師:北河原公敬
     演題:観音経を読む(17)
     主催:東大寺



  • 第577回日曜講演会
     日時:1/10 10:00
     会場:武蔵野大学グリーンホール
     講師:長尾重輝
     演題:聞法 ―仏教を学ぶということ―
     主催:武蔵野大学





  • 『摂大乗論』に学ぶ
     日時:1/14 19:00
     会場:青松寺貝塚ホール
     講師:竹村牧男
     主催:青松寺


  • 青松護持会講座「仏教歳時記」
     日時:1/16 13:30
     会場:青松寺観音聖堂
     講師:金子真介
     演題:第6回 修正会
     主催:青松寺


  • 仏教カルチャー・セミナー
     日時:1/16 13:30
     会場:中野サンプラザ研修室
     講師:奈良康明
     主催:日本仏教鑽仰会(03-3967-3288)




  • 仏教聖典を生活に活かす会
     日時:1/21 13:30
     会場:仏教伝道センタービル7F
     講師:ケネス・タナカ
     主催:仏教伝道協会


  • 在家仏教講演会
     日時:1/23 10:00
     会場:大手町ビル
     講師:下田正弘
     演題:悟りと浄土
     主催:在家仏教協会




  • 駒澤大学仏教学会公開講演会
     日時:1/27 15:00
     会場:駒澤大学深沢校舎アカデミーホール
     講師:落合俊典
     演題:『師子素駄娑王断肉経』等四部六巻を訳した智嚴の『楞伽経』研究
     主催:駒澤大学仏教学部



  • 宗援連第25回情報交換会
     日時:1/30 15:30
     会場:東京大学仏教青年会ホール
     講師:田中徳雲「宗教者の使命と救済」
        鈴木悠紀子「命・生活・人生・魂を守る災害支援」
        渥美公秀「ネパール大地震:現状と課題」
     主催:宗教者災害支援連絡会


「ゆく年くる年」2015

2015-2016『ゆく年くる年』NHK総合、12月31日、23:45〜翌0:15

〔テーマ〕「笑顔のあすへ 希望の灯(ともしび)」

〔中継地〕
福井・永平寺
三重・伊勢神宮(キーステーション)
茨城・報国寺
宮城・上山八幡宮
島根・円成寺
滋賀・比叡山延暦寺
——————(ここで年越し)
三重・伊勢神宮(再)
愛媛・道後温泉
佐賀・今右衛門窯/泉山磁石場
福島・廣徳院
北海道・新函館北斗駅
三重・伊勢神宮(三)
ブラジル・リオデジャネイロ

参考:昨年の「ゆく年くる年」 http://buppo.hatenablog.com/entry/20141231/p1

2015年12月の展覧会

2015年12月に始まる展覧会から、日本およびアジアの文化・芸術・宗教に関連した内容のものをピックアップします。引用文は主催者サイトからの抜粋です。(情報収集にあたりましては、観仏三昧さんのデータを参考にさせていただきました)

サントリー美術館「水-神秘のかたち」12/16〜2/7
 水にかかわる神仏を中心に、その説話や儀礼、水に囲まれた理想郷や水の聖地など、水を源とする信仰に根ざした造形物を、彫刻、絵画、工芸にわたって展観することで、日本人が育んできた豊かな水の精神性を浮び上がらせようとするものです。特に篤い信仰を集めた龍神は、国宝「善女龍王像」など優れた造形性を有するものが伝わり、龍神の持つ神秘の玉―「宝珠」に関する作例とともに、本展の見どころの一つとなります。
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2015_6/index.html

早稲田大学総合学術センター「日本古典籍の世界 和歌と神道-上野理旧蔵資料から-」12/4〜12/22
 上野理先生は、積年収集された古典籍の数々を、2006年に本学図書館に寄贈なさいました。中でも『中臣祓』を中心とする、中世・近世の神道関係の文献は、特異なコレクションと注目されます。そこで今回の展示では、「和歌」と「神道」を二本の柱に設定してみました。「和歌」と「神道」という、日本の伝統的な文化の基層となる世界を、今回の展示によってうかがい知ることができるでしょう。
http://www.wul.waseda.ac.jp/news/news_detail.html?news_no=570

国立歴史民俗博物館夷酋列像蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界―」12/15〜2/7
 フランス ブザンソン美術考古博物館からの帰国作品に加えて、日本各地の「夷酋列像」が一堂に。江戸〜幕末にかけての蝦夷地=北海道のイメージを見渡すまたとない機会。
https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/special/index.html#room4

京都国立博物館「さるづくし―干支を愛でる─」12/15〜1/24
 江戸時代には、伊藤若冲曾我蕭白長澤蘆雪といった錚々たる絵師が個性豊かな猿を描いています。とくに今回の展示では、生命感あふれる猿の姿を描き出し名手と謳われた森狙仙の作品もご覧いただけます。さらに、日本では見ることが難しかったテナガザルのほほえましい姿を描いた中世水墨画の名品や、物語に猿が登場する絵巻物、斬新なデザインの根付などが一堂に会します。
http://www.kyohaku.go.jp/jp/project/2015_monkey.html

京都国立博物館「獅子と狛犬」12/15〜3/13
 獅子、狛犬ともに百獣の王ライオンの姿を写したもので、頭上に一本の角のある方を狛犬、無い方を獅子と呼びます。エジプト、中東地域では写実的なライオンの像が造られましたが、生息地から遠く離れた中国では姿が変わって唐獅子となり、それが日本に伝わりました。平安時代降神社や寺院の入り口、あるいはお堂に置かれ、境内や神仏の像を守護する役を担ったのです。10余対の獅子・狛犬を並べた空間をおたのしみください。
http://www.kyohaku.go.jp/jp/theme/floor1_5/f1_5_korekara/shishi_2016.html

京都国立博物館「地蔵と十王」12/15〜3/21
 ほとけの救済に預からなかった人は、死後生前の行ないを吟味する裁判を受けなければならない。その裁判長が十王で、初七日から三回忌までを十人の王が担当する。閻魔王はその中心的な存在である。判決によって生まれ変わる世界が決まるため、裁判を亡者に有利なものにするため遺族が回忌供養を行なうのである。
http://www.kyohaku.go.jp/jp/theme/floor1_2/f1_2_korekara/scu_20151215.html

京都文化博物館「日本のふるさと 大丹後展」12/5〜1/17
 「交流」、「伝説」、「霊地」、「生産」の4つのテーマを設定して、丹後の過去から現在までに生まれた数々の至宝をご紹介いたします。国内最古の紀年銘鏡である青龍三年銘方格規矩四神鏡、日本海を思わせるガラス玉、高級絹織物の丹後ちりめんなど多彩な品々が皆様をお迎えします。
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_kikaku_post/furusato_tango/

奈良国立博物館「おん祭と春日信仰の美術」12/8〜1/17
伝統ある春日若宮おん祭を取り上げ、絵画や文献史料等を通じ、おん祭の歴史と祭礼を紹介し、あわせて春日信仰に関する美術を展示する恒例の企画で、今年で10回目を迎えます。本年は、祭礼の間、若宮神が遷座する御旅所の御假殿にスポットを当てるとともに、平安時代の若宮社創建にまつわる上皇や貴族の動向を紹介いたします。
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2015toku/on-matsuri/2015on-matsuri_index.html

瀬戸内海歴史民俗資料館「小豆島霊場資料展」12/22〜2/28
小豆島八十八箇所霊場に関する絵図や絵葉書、パンフレット、古文書などを紹介します。
http://www.pref.kagawa.jp/setorekishi/exhib/project.html

大分県立歴史博物館「お釈迦さまと羅漢さん」12/22〜2/14
「羅漢」はお釈迦さまの弟子、仏教で最高の修行を終えた僧侶のことです。本展では、お釈迦さまと、お釈迦さまをとりまくさまざまな仏さま、個性豊かな弟子たちの姿を紹介します。
http://kyouiku.oita-ed.jp/rekisihakubutukan-b/ex/index.html

「一遍聖絵」展

特別展「国宝 一遍聖絵」を見ました。3館共同開催のうち、遊行寺宝物館は行けず、神奈川県立歴史博物館に1回、巻き替えがある神奈川県立金沢文庫は2回、加えてサテライト会場の東京国立博物館に1回。
一遍聖絵は遺品の少ない一遍上人の生涯が分かる史料であると同時に、自然や建物や人物の描写に優れた見飽きぬ絵画です。全巻展示ということで日ごろ引用が多い場面だけでなく、ただの田園風景などもじっくり見られます。沿道の木々から田舎の畦道、家々の屋根などまで丁寧に描いているのに驚嘆。でもやはり魅力は群衆描写でしょう。僧侶や武士、庶民やホームレスも巧みに描き分け、踊り念仏のような運動する肉体の捉え方も正確。人物の寸法は思いがけなく小さいのに、その人物の心情までもが伝わってくるようです。
全12巻を4巻ずつ分けて展示されていることで、観覧者が分散したのか行列はなく、1館ごとの分量がほどよくて集中も途切れません。説明の労が軽減されたせいか、そのぶん各館の個性が出ているのも特筆に値します。歴博は阿弥衣・鉦鼓・持蓮華・他阿真教坐像・骨蔵器など立体の資料が目を引きます。金沢文庫は手持ちの聖教で手厚い補足。聖徳太子から高野山善光寺まで何でもござれで、いつもながら隙がありません。会場入り口で二河白道を紹介し、冒頭に六字名号を揃えたのが聖絵の世界への導入としてお見事です。東博はセットから流出した第七巻の展示がメインですが、他の巻を模本で見せてくれるのが親切。絵柄がハッキリしているし、本物の絹製と模写の紙製の違いもよく分かります。
あえて印象で分けるなら、暦博は墓参や鎌倉入りの一悶着などリアルな歴史のひとこまという趣が強く、金沢文庫は熊野本宮での神託久美浜の龍など奇瑞めいた場面が心に残ります。
図録はほぼ全場面の画像、釈文の原文と大意を掲載する親切な造り。さらに金沢文庫はオリジナル図録も作成。でもこれらさえあれば観覧しなくて済むかというと、やはり現物を見た後では写真はのっぺり見えて味気なく感じます。あくまで展示を見た後の確認資料といえます。
しかし、嬉しいことに図録には専門家が寄稿した論考とコラムを多数掲載。そのテーマから研究者というのはどんな点に注目するのかがおのずと知れて興味深いです。テーマをいくつか挙げると、神社と一遍の関係、熊野権現が山伏姿であること、踊り念仏の始まりは墓前での呪法ではないか、遊行を季節の移ろいで描写、画家は三度描かれる四天王寺の関係者か、など。一作品からこれほどの情報が読み取れるのかと驚くばかりでした。
大きな博物館一館で企画していたらおそらく総花的になっていたところを、所蔵先の地元で分散開催したことで初めて見えてきたものがある有意義な企画だと思いました。