仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

2023年10月の講演

東京近辺で2023年10月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(10/1更新)


  • 摩天楼法話会「わかる言葉で聴く仏教」
     日時:10/4 14:00
     会場:新宿区・常圓寺
     講師:加藤圓清
     演題:心が軽くなる説法ライブ 歌で届けるお釈迦様の教え
     主催:東京都西部社会教化事業協会(詳細




  • 親鸞思想の解明
     日時:10/10 14:00
     会場:親鸞仏教センター・Zoom
     講師:本多弘之
     演題:『一念多念文意』を読む
     主催:親鸞仏教センター(※要申込み)


  • 連続講座「新仏教教団を学ぼう」総論
     日時:10/12 18:30
     会場:オンラインまたは仏教伝道センター会場参加
     講師:島薗進
     演題:仏教系新宗教について
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)



  • 三康文化研究所第2回公開講座
     日時:10/16 16:00
     会場:三康図書館閲覧室・Zoom
     講師:石川琢道「『世親『往生論』入門 なぜ浄土宗正依の論書なのか」
        柴田泰山「『観経』に関する書誌学的整理」
     主催:三康文化研究所(詳細)(※要申込み)



  • 仏教カルチャー・セミナー
     日時:10/21 13:30
     会場:新国際ビル9階日本交通協会会議室916
     講師:櫛谷宗則
     演題:地によりて倒れた者は、地によりて起きる
     主催:日本仏教鑽仰会



  • 川崎大師仏教文化講座「弘法大師の生涯と思想」
     日時:10/22 14:00
     会場:川崎大師教学研究所講堂
     講師:種村隆元
     演題:弘法大師とインド密教
     主催:川崎大師教学研究所(詳細


  • 仏教聖典を生活に活かす会
     日時:10/24 13:30
     会場:仏教伝道センタービル7F(会場・オンライン同時開催)
     講師:名取芳彦
     演題:こだわりから離れる『般若心経』の捌き方
     主催:仏教伝道協会(※要申込み)


  • 仏教初心者講座「一から学ぶ日本の仏教」
     日時:10/24 18:30
     会場:AP大阪梅田東(会場・オンライン同時開催)
     講師:宇野全智
     演題:曹洞宗道元 瑩山
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)


  • 第810回仏教文化講座
     日時:10/25 14:00
     会場:丸の内マイプラザ4階ホール
     講師:井田茂「宇宙における生命 最先端科学における現状」
        小和田哲男徳川家康の江戸築城と浅草」
     主催:浅草寺詳細)(※要申込み)


  • 綜合仏教研究所特別講座「求法と巡礼の物語 中世日本の僧伝絵巻を中心に」
     日時:10/26 13:20
     会場:大正大学綜合仏教研究所研究室1
     講師:小峯和明
     演題:鑑真の伝法の旅―『東征伝絵巻』を読む
     主催:大正大学綜合仏教研究所(詳細


  • 駒澤大学禅研究所公開研究会
     日時:10/28 13:30
     会場:駒澤大学中央講堂(オンラインによる同時配信)
     講師:石井修道・小川隆・土屋太祐・張超・頼住光子
     演題:中国禅から道元禅へ―石井修道先生傘寿記念研究討論会
     主催:駒澤大学禅研究所(詳細)(※要申込み)


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  • 仏教情報センター設立40周年記念大会
     日時:11/7 14:00
     会場:築地本願寺第二伝道会館蓮華殿(YouTubeライブ配信あり)
     演題:聲のちから 祈りのちから
     主催:仏教情報センター(詳細



  • 川崎大師公開講演会
     日時:11/19 14:00
     会場:川崎大師教学研究所講堂
     講師:中島隆博
     演題:世界哲学と空海
     主催:川崎大師教学研究所(詳細


  • 興福寺文化講座
     日時:11/25 13:30
     会場:文化学園
     講師:吉村誠「玄奘三蔵と『般若心経』」
        森谷英俊「お釈迦様の教え(2)」
     主催:興福寺




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2023年9月の講演

東京近辺で2023年9月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(9/1更新)



  • 宗教・文化講座「霊を慰める」
     日時:9/3 14:00
     会場:海老名市・弥生神社
     講師:西村明
     演題:産業殉職者の慰霊
     主催:弥生神社


  • 摩天楼法話会「わかる言葉で聴く仏教」
     日時:9/6 14:00
     会場:新宿区・常圓寺
     講師:谷川寛敬
     演題:「ご縁」って何?「良縁」と「悪縁」の違いとは?仏教が説く生き方の極意!
     主催:東京都西部社会教化事業協会(詳細



  • 第643回 日曜講演会
     日時:9/10 10:00
     会場:武蔵野大学雪頂講堂(対面とYouTube配信)
     講師:吉水岳彦
     演題:仏教的な支縁を考える コロナ禍の社会を振り返って
     主催:武蔵野大学詳細



  • 第43回愛宕薬師フォーラム
     日時:9/11 14:00
     会場:港区・別院真福寺地下講堂
     講師:伊藤亜紗
     演題:自と他の間にある利他
     主催:智山教化センター(詳細)(※要申込み)


  • 仏教カルチャー・セミナー
     日時:9/16 13:30
     会場:新国際ビル9階日本交通協会会議室916
     講師:松本紹圭
     演題:グッド・アンセスター 私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか
     主催:日本仏教鑽仰会




  • 第809回仏教文化講座
     日時:9/25 14:00
     会場:丸の内マイプラザ4階ホール
     講師:武見ゆかり「人生100年時代に「これならできる」食生活改善のコツ!」
        白井裕泰「ベトナムの仏教建築」
     主催:浅草寺詳細)(※要申込み)


  • 仏教初心者講座「一から学ぶ日本の仏教」
     日時:9/26 18:30
     会場:AP大阪梅田東(会場・オンライン同時開催)
     講師:松山大耕
     演題:臨済宗栄西
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)


  • 特別展「京都・南山城の仏像」記念講演会
     日時:9/28 13:30
     会場:東京国立博物館平成館大講堂
     講師:増田政史
     演題:南山城の仏像の世界
     主催:東京国立博物館詳細)(※受付終了)


  • 綜合仏教研究所特別講座「求法と巡礼の物語 中世日本の僧伝絵巻を中心に」
     日時:9/28 13:20
     会場:大正大学綜合仏教研究所研究室1
     講師:小峯和明
     演題:円仁の求法と巡礼?『入唐求法巡礼行記』を読む
     主催:大正大学綜合仏教研究所(詳細


  • 興福寺文化講座
     日時:9/30 13:30
     会場:文化学園
     講師:辻明俊「多聞院日記にみる酒造り」
        森谷英俊「お釈迦様の教え(1)」
     主催:興福寺




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  • 親鸞思想の解明
     日時:10/10 14:00
     会場:親鸞仏教センター・Zoom
     講師:本多弘之
     演題:『一念多念文意』を読む
     主催:親鸞仏教センター(※要申込み)


  • 連続講座「新仏教教団を学ぼう」総論
     日時:10/12 18:30
     会場:オンラインまたは仏教伝道センター会場参加
     講師:島薗進
     演題:仏教系新宗教について
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)


  • 仏教聖典を生活に活かす会
     日時:10/24 13:30
     会場:仏教伝道センタービル7F(会場・オンライン同時開催)
     講師:名取芳彦
     演題:こだわりから離れる『般若心経』の捌き方
     主催:仏教伝道協会(※要申込み)


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2023年8月の講演

東京近辺で2023年8月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(8/1更新)


  • 親鸞思想の解明
     日時:8/8 14:00
     会場:親鸞仏教センター・Zoom
     講師:本多弘之
     演題:『一念多念文意』を読む
     主催:親鸞仏教センター(※要申込み)



  • 川崎大師第56回夏期講座
     日時:8/20-22 7:00
     会場:川崎大師信徒会館大講堂
     講師:20日 種村隆元「密教のさとり」
        21日 中村桂子「生きものである人間がどう生きるか」
        22日 宮本芳彦「太鼓が繋ぐ人の縁」
      主催:川崎大師(詳細


  • 第808回仏教文化講座
     日時:8/23 14:00
     会場:丸の内マイプラザ4階ホール
     講師:東原和成「嗅覚と健康」
        小野良平「信仰の場と風景」
     主催:浅草寺詳細)(※要申込み)



  • 仏教初心者講座「一から学ぶ日本の仏教」
     日時:8/29 18:30
     会場:AP大阪梅田東(会場・オンライン同時開催)
     講師:岩田尚登
     演題:時宗・一遍
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)


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  • 特別展「京都・南山城の仏像」記念講演会
     日時:9/28 13:30
     会場:東京国立博物館平成館大講堂
     講師:増田政史
     演題:南山城の仏像の世界
     主催:東京国立博物館詳細)(要申込み)



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2023年7月の講演

東京近辺で2023年7月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(7/1更新)



  • 三浦節夫先生追悼シンポジウム
     日時:7/8 13:00
     会場:オンライン(Zoom)
     講師:長谷川琢哉、佐藤厚、ライナ・シュルツァ、北田建二
     演題:「井上円了研究の過去・現在・未来」について
     主催:東洋大学井上円了哲学センター(詳細



  • 綜合仏教研究所特別講座
     日時:7/10 15:10
     会場:大正大学綜合仏教研究所研究室1
     講師:倉本尚徳
     演題:石碑・塔銘・墓誌―『続高僧伝』等との比較よりわかること
     主催:大正大学綜合仏教研究所(詳細


  • 親鸞思想の解明
     日時:7/11 14:00
     会場:親鸞仏教センター・Zoom
     講師:本多弘之
     演題:浄土を求めさせたもの 『大無量寿経』を読む
     主催:親鸞仏教センター(※要申込み)


  • 第32回 BDKシンポジウム「石仏の魅力とフォト法話 写真を通じて教えに触れる」
     日時:7/13 18:00
     会場:オンラインまたは仏教伝道センター会場参加
     講師:楳村修治・高橋直
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)


  • 仏教カルチャー・セミナー
     日時:7/15 13:30
     会場:新国際ビル9階日本交通協会会議室916
     講師:吉村均
     演題:求道とは何か、空海道元親鸞をみつめて
     主催:日本仏教鑽仰会


  • 駒澤大学大学院仏教学研究会公開講演会
     日時:7/17 16:20
     会場:駒澤大学中央講堂(オンラインによる同時配信)
     講師:大内文雄
     演題:隋・唐初の「仏教史」編纂―史書・経録・類書のあいだ―
     主催:駒澤大学大学院仏教学研究会(詳細)(※要申込み)



  • 東京大学仏教青年会講座
     日時:7/22 15:00〜17:00
     会場:東京大学仏教青年会会館ホール(およびZoomオンライン)
     講師:杉木恒彦
     演題:仏典の動物(畜生)観 ――象徴、倫理、救済――
     主催:東京大学仏教青年会(詳細)(※要申込み)



  • 第642回 日曜講演会
     日時:7/23 10:00
     会場:武蔵野大学雪頂講堂(対面とYouTube配信)
     講師:三浦裕子
     演題:中世の人々と仏教―能・狂言から考える
     主催:武蔵野大学詳細


  • 仏教聖典を生活に活かす会
     日時:7/25 13:30
     会場:仏教伝道センタービル7F(会場・オンライン同時開催)
     講師:松本智量
     演題:幻と闘わない~正しい見方~
     主催:仏教伝道協会(※要申込み)


  • 第807回仏教文化講座
     日時:7/25 14:00
     会場:丸の内マイプラザ4階ホール
     講師:井出留美「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」
        深谷隆司「浅草寺と私」
     主催:浅草寺詳細)(※要申込み)


  • 仏教初心者講座「一から学ぶ日本の仏教」
     日時:7/25 18:30
     会場:AP大阪梅田東(会場・オンライン同時開催)
     講師:井上見淳
     演題:浄土真宗親鸞
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)




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2023年6月の講演

東京近辺で2023年6月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(6/1更新)





  • 親鸞思想の解明
     日時:6/13 14:00
     会場:親鸞仏教センター・Zoom
     講師:本多弘之
     演題:浄土を求めさせたもの 『大無量寿経』を読む
     主催:親鸞仏教センター(※要申込み)


  • 第43回禅博セミナー
     日時:6/17 13:00
     会場:駒澤大学中央講堂、オンライン配信
     講師:モート,セーラ
     演題:黄檗宗と日本文化~文人茶で楽しむ墨の薫り、茶の香り~
     主催:駒澤大学禅文化歴史博物館(詳細





  • 第641回 日曜講演会
     日時:6/18 10:00
     会場:武蔵野大学雪頂講堂(対面とYouTube配信)
     講師:田中教照
     演題:安養浄土を選ばしめ給う
     主催:武蔵野大学詳細


  • 仏教聖典を生活に活かす会
     日時:6/20 13:30
     会場:仏教伝道センタービル7F(会場・オンライン同時開催)
     講師:名取芳彦
     演題:心の天気は自分で晴らす
     主催:仏教伝道協会(※要申込み)



  • 川崎大師仏教文化講座「弘法大師の生涯と思想」
     日時:6/25 14:00
     会場:川崎大師教学研究所講堂
     講師:北尾隆心
     演題:弘法大師と即身成仏
     主催:川崎大師教学研究所(詳細


  • 第806回仏教文化講座
     日時:6/26 14:00
     会場:丸の内マイプラザ4階ホール
     講師:鈴木 誠「海を渡った日本庭園」
        高橋一樹「人とモノの「交流」からみた鎌倉時代の浅草」
     主催:浅草寺詳細)(※要申込み)


  • 仏教初心者講座「一から学ぶ日本の仏教」
     日時:6/27 18:30
     会場:AP大阪梅田東(会場・オンライン同時開催)
     講師:工藤量導
     演題:浄土宗・法然
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)


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  • 第32回 BDKシンポジウム「石仏の魅力とフォト法話 ~写真を通じて教えに触れる~」
     日時:7/13 18:00
     会場:オンラインまたは仏教伝道センター会場参加
     講師:楳村修治・高橋直
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)




                                                                  • -




大江健三郎追悼で引用された文章

3月3日に亡くなった作家大江健三郎を追悼する特集が、文芸誌の5月号で一斉に組まれました。『群像』『文學界』『新潮』『すばる』の4誌です。
自分がいかに故人と親しかったかという自慢話はどうでもいいので適当に飛ばします。注目したのは、追悼文の中で故人の作品のどんな部分を「引用」しているか、です。大江作品は、小説もエッセイも他の書き手の作品を引用することで成り立っています。ならば手練れの作家らが追悼文で引用した文章を集めたら、大江文学の骨格が立ち上がって見えてくるのではないかと考えたわけです。4誌に掲載された「引用」は次の通りです。


講談社『群像』2023年5月号「追悼・大江健三郎」(16名執筆)から

阿部和重
〈かつてこの城山の小さな城がこの地方の政治権力を代表していたころ、僕の祖父は百姓一揆の指導者をだまして裏切らせ孤立させたうえで殺し、そして城主から拳ほどの金の亀をもらった。僕はその祖父を恥じて、鳥(バード)にも菊比古にもそれを話したことがなかった〉『不満足』

いとうせいこう
〈僕らはその僕らの車を、フランス風にジャギュアと呼んで、他のすべてのジャガーと区別していた〉『叫び声』
〈あなたが伯父さんからもらって着ていたバック・スキンの外套、どうした?〉『個人的な体験』

尾崎真理子
〈小説で自分の実際の生活を誇張したり、ゆがめたり、ひっくり返したりして検討してみているうちに、何だか現実生活と小説のあいだの境目がおかしくなっている〉『作者自身を語る』

工藤庸子
〈小説を書くことは、すでに作家の意識のなかにあるところのものの、等価物 equivalent を文章によってつくりあげる、という作業ではない〉『文学ノート 付=15篇』

蓮實重彥
〈——確かにきみはそれに成功したね。しかしその過程で、若い時の大きい読者を失なった。そのジレンマは感じるだろう? 今後それは、さらに深刻になるのじゃないか?〉『取り替え子』

沼野充義
〈教会という言葉は、私らの定義で、魂のことをする場所のことです〉『宙返り』


文藝春秋文學界』2023年5月号「追悼大江健三郎」(対談含む12名執筆)から

町田康
〈ハロオは日本語の、ようおいでなさいです、お客さんがきたら、おまえらもいうじゃろがあ、ようおいでなさい、ようおいでなさい、ハロオ、ハロオ! じゃあ〉『遅れてきた青年』

中村文則
(引用ではないが長めの要約)『共同生活』

朝吹真理子
〈腿の間の毛むくじゃらな様子を見あげるのが好きだった〉『懐かしい年への手紙』

松浦寿輝
〈快楽の動作をつづけながら形而上学について考えること、精神の機能に集中すること、それは決して下等なたのしみではないだろう。いくぶん滑稽ではあるが、それは大人むきのやりかたというものだろう〉『われらの時代』
〈結婚し、二人の子供をつくり二十冊の自分の本に背後から責めたてられ、軽いアルコール中毒になり、癌で死ぬる、さして天才もない作家の生涯のおだやかな線路に、ぼくの機関車は乗ろうとしていたのだ。あらゆる冒険的なるものをあきらめて〉『日常生活の冒険』

阿部和重
〈***の化粧部屋で、一発やりませんか? 一発やってみましょうよ!〉〈オジサン、オマンコ一発ヤッテミマショウヨ!〉『洪水はわが魂に及び』
〈かつてあじわったことのない深甚な恐怖感が鳥(バード)をとらえた〉『個人的な体験』


◆新潮社『新潮』2023年5月号「追悼 永遠の大江健三郎文学」(12名執筆)から

尾崎真理子
〈私は生き直すことができない、しかし/私らは生き直すことができる〉『晩年様式集』
〈昼近くなって父が書斎から宿酔の状態でノソノソ降りてくる時! 全体に不機嫌で・憂鬱そうで、自分を恥じているようでもあれば世間に腹を立てているふうでもあり、家の誰ともろくに話をしません。(中略)電話がかかってくると、はじめから無愛想な返事をして、たいてい途中で腹をたてて切ってしまいます〉『キルプの軍団』

多和田葉子
〈冗談、「穴居人」来たる、演劇版『みずから我が涙をぬぐいたまう日』のリハーサル、「赤革のトランク」、冗談はつらぬかれた、大眩暈〉『水死』目次

町田康
〈ここに人間の魂というものがあって、それが肉体ともども生きていくわけだね? 僕の村には、こういう伝承がある〉『取り替え子』

岡田利規
〈僕は電車の窓の向こうに、一応開発された——四国の森の中で育って、丘陵や林の風景に敏感な父によると、単に破壊されたよりもっと悪い——遠方の稜線を眺めていました〉(以下略)『キルプの軍団』

平野啓一郎
〈これが日本人なのだ。ひるがえっていえばすなわち僕自身ということなのだ〉『沖縄ノート


集英社『すばる』2023年5月号「追悼大江健三郎」(3名執筆)から

中村文則
〈「わしは自分が何者であるか、よく存じておる」と、ドン・キホーテが答えた〉『憂い顔の童子エピグラフ

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……うーん、良い思いつきだと思ったのですが、実際に引用文を書き出してみると、どうも冴えないですね。
そもそも引用をしない執筆者もずいぶんいました。作家を追悼するのにどうして作品にふれないのかと不満がつのってきたところで、ふと気づきました。ああそうか、追悼文というのは、念入りに調べ上げて論じてはいけないんだ。記憶だけでさらっと書くものなのだと。つまり、あれです、お香典にピン札を入れてはいけないというやつですね。
それを知っただけでも収穫はあったというものですが、このままではうまく閉じられなくなってしまいました。そこで私が好きな大江健三郎の言葉を引用して終わりたいと思います。それは「絶望しすぎず、希望を持ちすぎず」です、

〈渡辺(一夫)先生が、励ましとカラカイのこもごも感じられる口調で、「絶望しすぎず、希望を持ちすぎず」というのが、ルネサンスのユマニストの生き方ですけれど、といわれたことがあった。僕の小説は、まさに絶望しやすく、それでいてヤワな希望にすがりつく若者たちを描くものだったからだ。ところが大きい困難を持つ子供と一緒に生き始めてみると、ユマニストの生活態度こそがなにより自分に必要な、しかも大きく欠けているものだと感じられた〉
 ——大江健三郎『言い難き嘆きもて』p301「ユマニスムに向かって」から

これはエッセイ集からの引用ですが、講演でも話されていましたし、言い回しは少し違いますが『ヒロシマ・ノート』の結びにもこの言葉が出てきます。上の引用にもあるように小説の登場人物にも多分に反映されていますし、作家自身の生き方を方向付ける思想だったはずです。
ですから大江健三郎といえば、「絶望しすぎず、希望を持ちすぎず」の人だったと私は思うのです。

2023年5月の講演

東京近辺で2023年5月に開かれる講演・講座をメモします。開催日順。詳細は各主催者または会場にお尋ねください。(5/2更新)



  • 一休フォーラム
     日時:5/8 13:00
     会場:學士会館
     講師:芳澤勝弘、ディディエ・ダヴァン、飯島孝良、小川隆
     主催:花園大学国際禅学研究所(詳細


  • 親鸞思想の解明
     日時:5/9 14:00
     会場:親鸞仏教センター・Zoom
     講師:本多弘之
     演題:浄土を求めさせたもの 『大無量寿経』を読む
     主催:親鸞仏教センター(※要申込み)



  • 仏教文学会公開シンポジウム
     日時:5/13 13:00
     会場:実践女子大学403教室・Zoom
     講師:間枝遼太郎・星優也・児島啓祐
     演題:中近世の寺社縁起と歴史叙述―始源の創出と変遷をたどる―
     主催:実践女子大学詳細)(※要申込み)




  • 仏教文学会公開シンポジウム
     日時:5/14 13:00
     会場:実践女子大学403教室・Zoom
     講師:大河内智之・増記隆介・苫名悠・高岸輝
     演題:美術史から見た寺社縁起の展望―中央と地域の関係に注目して―
     主催:実践女子大学詳細)(※要申込み)


  • 第67回国際東方学者会議シンポジウム
     日時:5/20 10:00
     会場:日本教育会館8階会議室
     演題:1「中国文献の異伝・異文と日本古典文芸」
        2「玄奘三蔵の築き上げた唯識の教義と実践、そしてその日本的展開」
        3「鄭振鐸『中国俗文学史』とその後 ―― 歌謡と説唱研究の展開と課題」
        4「ユーラシアのなかの嘉慶維新(1799)」
        5「中国鬼神論の最前線」
        6「「志」からみた漢唐間の政治文化」
     主催:東方学会(詳細





  • 川崎大師仏教文化講座「弘法大師の生涯と思想」
     日時:5/21 14:00
     会場:川崎大師教学研究所講堂
     講師:小峰彌彦
     演題:弘法大師の般若心経解釈
     主催:川崎大師教学研究所(詳細


  • 三康文化研究所第1回公開講座
     日時:5/22 16:00
     会場:三康図書館閲覧室・Zoom
     講師:古宇田亮修「『バガヴァッド・ギーター』の翻訳をめぐって」
        西村実則「仏教と鐘」
     主催:三康文化研究所(詳細


  • 仏教聖典を生活に活かす会
     日時:5/23 13:30
     会場:仏教伝道センタービル7F(会場・オンライン同時開催)
     講師:松本智量
     演題:転法輪 真理を独占しない
     主催:仏教伝道協会(※要申込み)



  • 仏教初心者講座「一から学ぶ日本の仏教」
     日時:5/30 18:30
     会場:AP大阪梅田東(会場・オンライン同時開催)
     講師:天野高雄
     演題:真言宗空海
     主催:仏教伝道協会(詳細)(※要申込み)



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