仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 海人を見た

国立能楽堂の定例公演でお能「海人(あま)」を見ました。藤原房前が亡き母の影を追い、母が死に至る経緯を知り、供養するという話。前半のクライマックス「玉之段」が圧巻でした。
同作品の資料から仏教との関わりを抜き書きすると次の通り。

  • 唐から興福寺へ三つの宝が贈られる。
     (1)華原磬=かげんけい。一度打つと響きのやまない法具
     (2)泗浜石=しひんせき。自然と水が湧き出る硯
     (3)面向不背の珠=めんこうふはいのたま。どこから見ても釈迦像が正面に見える珠
  • このうち(3)を龍に奪われ、房前の母がそれを取り返したというのが物語の骨格。ちなみに(1)と同名の品が現在、興福寺国宝館にあるそう。
  • 後半の供養で読誦されるのは、法華経提婆達多品の偈にある龍女成仏のくだり。なお、その直前の地謡「寂寞無人声」だけは同経法師品の偈の一句。
  • この物語が讃岐国志度寺の縁起であると最後に明示。同寺は四国遍路の八十六番札所。