仏報ウォッチリスト

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 お東の至宝を見た

東京・日本橋高島屋で展覧会「東本願寺の至宝展 両堂再建の歴史」(3/30まで)を見ました。
デパート催事場の巡回展だからとあなどってはいけません。見どころは、祖師方の筆跡と、寺の普請に関する記録。それから、宣伝チラシに刷られている絢爛な襖絵や屏風絵も、印刷では伝えきれない迫力があります。
まず書跡として、親鸞聖人の自筆が4点、うち賛文を寄せた「安城御影」は模写、「教行信証坂東本」は複製で、「唯信鈔」と「御消息」が現物。蓮如上人の自筆は「報恩講私記」「帖外御文」「消息」。総じて禅僧の墨跡のように大上段に構えたところがないのが魅力です。
東本願寺は江戸初期に創建以来、4度も火災に遭ったといいます。ですがそのたびに見事再建。寺領を持たない同寺の再興を支えたのは門徒の寄進でした。「寛政度用材運搬図屏風」は、庄内の山地から巨大な木材を伐り出して運ぶ様子を絵巻風に描写。幟を立てた提灯行列を信者たちは有り難く見送ったのでしょう。
篤信を裏付ける珍品として、実物の「毛綱」に驚かされました。〈門徒による寄進の用材を山中から運び出す場合、藁縄ではいかに太い綱にしても途中で切れてしまったという。そこで使われたのが毛髪を麻紐と一緒に綱に編んだ毛綱であり、とくに、金銭に余裕のない女性たちが信仰心と本山への助成の気持ちの証しとして毛髪を献じたとされる〉(当展図録より)。こういう加担のしかたもあったのですね。
装飾の美しい建具はまさに本山サイズ。襖は高さなんと2メートル68センチ。衝立もまた重量級。望月玉泉の諸作品は細密画に類するのでしょうが、大画面でこそ映える力強さを併せ持っています。
会期が短いのでどうぞお気をつけて。