国立能楽堂で、お能「小塩」を見ました。在原業平が二条后に対する思慕をうたう。「大原や小塩の山も今日こそは神代のことも思ひ出づらめ」の歌が全編に響く。小塩は地名であるとともに、惜しいに掛けてある。老人から青年へまばゆく変化する、しっとりとした舞台。
花がキーワード。春日野の花は桜。季節は春。「散りもせず、咲も残らぬ花盛り」というのが満開の一時をあますところなく表現しています。
歴史的には何のはたらきもない在原業平という人物を現代の我々が知っているのは、伊勢物語や百人一首を通じてなのかと思ってしまいますが、実はこういう舞台が延々と演じられてきた結果なのでしょう。
この舞台は興福寺勧進能の最終回でした。最後の演目に選ばれた「小塩」は、興福寺一乗院で初演したというゆかりの作品とのこと。春日明神も出てきます。全15回のうちどのくらい来れたでしょうか。たくさん勉強させていただきました。