仏報ウォッチリスト

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 能「遊行柳」

宝生能楽堂で、お能「遊行柳」を見ました。
一遍上人の流れをくむ遊行の聖が、布教伝道の途中で老人と出会います。老人は朽ち木の柳の精で、遊行上人の念仏によって成仏します。観世小次郎信光が新黒谷での勧進能のために作った作品で、「西行桜」を踏まえているといいます。
シテは中入りで山の作り物の中に消えて着替え。物着でもなく完全な別室でもなく、後方で後見が着替えを手伝う姿だけが見えます。手の動かし方から推測するに針仕事なども後見がしているもよう。
後ジテが登場し、三体詩、往生礼讃偈、五会法事讃などが引かれ、清水寺の縁起が引用されて、「朽木の柳忽ちに楊柳観音と現はれ」。「四本の木蔭」の四とは桜・柳・楓・松だとのことで、そこから「柳桜をこきまぜて」となり、源氏物語の柏木の恋の話に。なんだか盛りだくさん。
草木成仏といえば法華経と思うところ、この物語では浄土信仰で草木が救われようとしています。弥陀の悲願で西方に生まれ変わるのだと。浄土教では念仏をとなえたものが救われるわけで、前提としては人間を対象としているのではないかと思うのですが。その奇抜な設定を違和感なく見せるのが、芸の力。
なお、どうでもいいことですが、お能の前に上演された狂言「武悪」を見損ねました。開演に3分ほど遅刻してしまい、どうせ10分くらいで終わるのだろうからと、ロビーでチラシなど見ながら待っていたところ、なぜかいつまでも終わらない。あれ?あれ?と思っているうちに1時間経ってやっと終了し休憩に。これほど長い狂言があるとは知りませんでした。こんなことならタイミングを見て途中入場すべきでした。そばにいたスタッフの方々、教えてくださればいいのに。