仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 寺社批判の投稿

このところ朝日新聞の「声」欄に、寺社へ注文をつける投稿が続けて載っています。

困窮者たちを
お寺救えぬか
  主婦 ○○○○(東京都三鷹市 77)
 昨今、心を痛める問題が多すぎる。とりわけ、この年の瀬に派遣社員の方たちが即時解雇され、即刻社員寮を追い出されるという問題は、本当に胸が痛む。(中略)
 日本の仏教界はこの現実をどう見ているのだろう。ニューヨークなどでは教会が率先してホームレスに食事を提供しているではないか。日本でお寺が早々と困っている人たちに炊き出しをしたとか、境内にテントを張って避難場所を提供したという話を聞いたことがない。
 葬式仏教になり、お寺と人々との関係が疎遠になったこともあるが、ここらでお寺が困っている人たちに手を差し伸べ、仏の志を示して欲しい。お釈迦様は衆生を救うためにこの世に生まれたのではなかったのか。
 ――朝日新聞(東京本社発行)08年12月23日付16面「声」欄

神社や仏寺は
困窮者傍観か
  会社員 ○○○(神奈川県藤沢市 69)
 (前略)私も派遣切りなどで仕事と住居を失った人に対し、神社仏寺が寝場所や食事を提供することを怠っているように見えます。
 新聞やテレビで、年始参りの賑わいは報道されますが、炊き出しや寝場所を提供していることが聞かれないことに憤りを覚えます。昔は神社仏寺が炊き出しや寝場所を提供し、弱者救済を率先していたように思います。
 しかし最近は、初詣でや寄付、冠婚葬祭で集めた金をためこむばかりではないでしょうか。金もうけ主義に陥っていないかと疑ってしまいます。一般企業とは違い、宗教団体は身を削ってでも弱者救済を本務としなければいけないのに、現状は全く異なる行動パターンになっていませんか。(後略)
 ――同 09年1月8日付16面「声」欄

社寺優遇する
税制見直して
  無職 ○○○○(神奈川県鎌倉市 68)
 (前略)20年以上前、京都市で社寺の拝観者に一律課税する「古都税」を設けようという声が上がりました。これに対し、社寺側が拝観停止という強硬策を出したことで、宗教法人と税制、信教の自由など様々な問題が論議されました。その後、社会情勢は大きく変わり、神社仏閣の多くが観光地化し、「自社経営」かと思わせる様々な事業を展開しているところもあるようです。
 駐車場や飲食店部門などの収益には課税されているようですが、拝観料や賽銭などには課税されないと聞きます。
 なぜ、宗教法人が税制面で優遇されるのかよく分かりません。私はこの際、宗教法人に対する課税を国民に納得できる制度にするよう検討して欲しいと思います。
 ――同 09年1月13日付11面「声」欄



新聞や雑誌の投稿欄というものは、読者が思いのままに論を戦わせる場のように見えて実は、しょせん編集部の意図に沿った産物にすぎません。持論に即したものだけを採用し、都合の悪いのは没にすればよいのですから。
としますと、これらのメッセージはどう受け止めればよいのでしょう。いずれ異論の投稿なり検証の記事なりを紙面に載せてバランスをとるのかと期待しているものの、今のところフォローなし。たいして目新しくないこんな切り口で、寺社を小突く目的は何なのでしょうか。
投稿ではみな一様に、寺社は何もせずぬくぬくしている、と言いたげですが、もしもプロの記者だったら、そこは伝聞や憶測ではなく、きちんと取材して裏付けをすべきかなめです。観光で潤っているお寺など一体どれだけあるのでしょうか。お坊さんたちだって我々と同じ社会のルールに従って生きていて、不況の影響をもろに受けつつも、営業努力で何とか糊口をしのいでいるのではないかと思いますよ。
寺社は本当に何もしていないのか。たいていのお寺では毎朝、お経をあげているはずです。読経の功徳を回し向けて我々の幸せを願ってくださっているのです。……とまあ、これ以上は信仰の話になりますから、そんなのばかばかしいと思われればそれまでですけれど。
いずれにせよ、私は投稿者各人を批判したいのではなく、編集の姿勢が疑問なわけです。当事者や評論家が覚悟を持って主張するならともかく、こうして素人に代弁させっぱなしはマズいでしょ。
と言うことを直接尋ねたところで、きっと先方の良いようにされるのがオチですので、ここにこうしてメモをして、今しばらくウォッチしていたいと思います。