仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 能「葛城」を見た

先日、宝生能楽堂お能「葛城(かづらき)」を見ました。羽黒山の山伏たちが大和の葛城山で雪に足止めされていたところへ謎の里女が現れる。家へ招いて暖をとらせたところで女は自分が葛城の神であると明かす。……
この物語には二つの背景があります。一つは「岩橋説話」といわれるもので、〈葛城の一言主神に役行者二上の嶽より神山まで石橋を渡せと命じる。しかし一言主神は自らの顔の醜さを恥じて昼は働かず、夜だけ働き、橋を架けるのが遅くなったと怒った行者が一言主神を縛めた〉という神話(当日配布パンフより)。そしてもう一つは、よく知られた天照大神の天の岩戸の伝説で、これは高天原が葛城山にあるとする中世の理解に基づいているといいます。
山伏の勤行によって女体の神が登場。伝説の一言主神であり、天照大神でもあります。
シテ「われ葛城の夜もすがら、和光の影に現はれて、五衰の眠りを無上正覚の月に覚まし、法性真如の宝の山に、法味に引かれて来りたり、よくよく勤めおはしませ」
大和舞を舞って、やがて岩戸の内に消えてゆく女神。しっとりとした余韻が漂い、心のわだかまりはきっと消えたのだと思えました。