仏報ウォッチリスト

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 雪舟「山水長巻」

前項に続いて、サントリー美術館で「毛利家の至宝 大名文化の精粋」を鑑賞しました。もとより戦国武将には興味がないのでそのあたりの展示はパスし、本展の目玉である〈国宝・雪舟筆「山水長巻」特別公開〉に集中。全長16メートルをじりじり進む長い列に2回並んで目に焼きつけてきました。
列を待つ間に読んだ説明パネルによると、最近の調査により画材は竹紙と分かったとのこと。現物を見るとざらつきがなく絹本のようで、滲みがほとんど見えません。
山水画は本来、縦方向の迫力で見せるのが常道だと思うのですが、これは天地40センチの横型超ワイドの画面でいかに奥行きを伝えているかが見どころ。移動するにつれて変わりゆく季節もこれ見よがしな表現ではなく、穏やかに照り返す水面に夏の日差しを見て、行き交う人々の賑わいに実りの秋を思い、白く染まる山に冬の冷気を感じるという具合です。
木々の緑、水面の青、着衣の朱と、随所に淡い彩色が効果的に使われています。意外に家屋と人物描写が多いのも、想像力をかき立てられる一因でしょう。いつまでもじっと眺めていたい世界、でも行列の移動に促されて一定のスピードで場面が変わってゆくことで、作品のリズムを心地よく感じました。