仏報ウォッチリスト

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 釈迦追慕展を見た

前項の鎌倉から移動して、神奈川県立金沢文庫で特別展『釈迦追慕』(12/7まで)を見ました。
内容を紹介する前に、移動手段について一言。鎌倉から金沢文庫まで地図ではごく近くに見えながら、これがちょっと厄介。かまくらびとが金沢(かねさわ)・六浦(むつら)に上陸して鎌倉中心部まで歩いていたはずの道のりも、現代人の足では半日つぶれかねません。そこで私は目の前を行く路線バスに飛び乗ったものの、このバスはゆるゆる走って1駅手前の金沢八景駅が終点と中途半端。どうも両館をはしごするにはJRと京急線を逗子で乗り継ぐのが無難かと思われます。
さて当展は称名寺釈迦如来像造立700年記念と銘打っています。称名寺は当館の隣。というか正確には金沢文庫が同寺の境内にあるのでしょうか。こう言うとローカルな展覧会に聞こえるかもしれませんが、実は奈良・京都はもちろん、インド以来の仏教信仰をたどるスケールの大きな企画です。
中心をなす展示品は、称名寺釈迦如来立像と、光明院弥勒菩薩坐像納入品の仏舎利です。まず、称名寺釈迦如来は院保作で清凉寺式。称名寺西大寺を総本山とする真言律宗の別格本山で、西大寺の本尊は清凉寺像の模刻ですから、展示像はその流れを汲むものという図式が見えてきます。
つづいては、このたび発見されたばかりの仏舎利。小さな仏像の内部に埋め込まれていて、包み紙には東寺室生寺の名がありました。その由来を裏付ける物的証拠として3つの書状、空海室生寺に仏舎利を埋めたと記す「弘法大師二十五箇条遺告」、室生寺の舎利を掘り出した「舎利相伝縁起」、その舎利を称名寺で受け取ったとする「舎利安置記」を展示。まことに綿密な実証に舌を巻きます。
空海の遺告には〈日本が危機に陥った時、この仏舎利を掘り出して修法の本尊とすれば怨敵は退散する〉という旨が記されているので、造像の時代背景から蒙古撃退を願って納入したとみられるそうです。
お釈迦様ご本人からその舎利へ、そして未来仏である称名寺本尊の弥勒菩薩(当館では複製を展示)へとリンクする構成がニクい。なお、同時展示のごちそうとして今夏に重要文化財となった運慶作の大威徳明王像(トルソー)を特別公開中です。